2015年1月場所総評

 白鵬がついに大鵬を超える33回目の幕内最高優勝を達成した。優勝回数は1958年からと大相撲の歴史から見れば、短い期間のみ比較可能な数字であるが、最多回数となった。

 1月場所はなんと言っても2日目。10年代で最高の1日だったと思う。蔵前時代が戻ってきたかのような熱戦の数々。この日はインタビュー担当が女性アナウンサーだったのが良かったのか、どうか知らないが素晴らしい内容。9日目も良い部類に入るのだが、2日目の前には霞む。

 全体的には普通くらいという印象だが、幕内優勝が13日目に決定したことを考慮すれば、取組がうまくカヴァーしたと見ることもできそう。取組を重視するファンには満足度が高かったはずだ。一方で優勝争いに重きを置いているファンにとっては少し物足りなさを感じたかも。

 個別に挙げていくと白鵬は全勝。今、第2の全盛期を迎えているのではなかろうか。2008年後半から09年のような踏み込みはないかもしれない。代わりに即座に反応して対応する力が磨かれている。いわばモデルチェンジしたのだ。野球でも若いころは速球派として活躍していた投手が晩年に技巧派に転向し勝ちを積み重ねる、あれに近い。50回はどうか分からないが、40回くらい優勝してくれそうだ。

 鶴竜は2日目に土がつき、6日目に2敗目を喫し優勝争いに絡めなかった。体重は154`と決して軽くないが、突かれると守勢に回りやすい。引き技もあって、それで星を拾うが、ほぼ間違いない反時計回りに回り込む。右下手を引ければ、守りはしっかりしてくれるのだが、それが叶わないとハラハラする。3月場所は鶴竜にとって相性の良い場所で、横綱としての初優勝を狙っていきたい。

 日馬富士は6日目の常幸龍戦が非常に勿体なかった。序盤の内容は白鵬を上回っていただけに、惜しまれる。11番勝って西正横綱の座を鶴竜から奪回に成功。白鵬が賜杯を逃すパターンとして筆者が真っ先に思い浮かぶは日馬富士が万全で勝ち続けるという展開である。そんな日馬富士もこれで7場所連続でV逸である。

 大関に目を移すと東正大関の稀勢の里。ここ2場所左四つになったときの強みに陰りを感じるのが非常に気になる。攻め急ぎがなくなり、突き押しの安定感は増している。苦手の碧山を退けたことは好材料。来場所も対戦が予想される。

 琴奨菊は4日目を終えて2勝2敗と苦しい土俵になりそうだったが、5日目からの5連勝。11日目に横綱・鶴竜を破りカド番脱出を決めた。状態が良ければ、まだまだやれるところを示してくれた。

 豪栄道は12日目を終えて5勝7敗と崖っぷちに追い込まれたが、そこから3連勝で千秋楽にカド番脱出。3月場所は豪栄道にとって地元である大阪開催。地元では今までのような大関としてふがいない相撲を見せるわけにはいかない。

 11月場所は碧山、逸ノ城の両新関脇が勝ち越したが、今場所は碧山が5勝、逸ノ城が6勝に終わった。碧山は11日目に日馬富士を破り、存在感を見せた。11月に比べて内容が悪くなっているようにも感じられず、もう少し勝てていてもよかった。逸ノ城は入門以来初の負け越し。「右差し百万石」は言い過ぎかもしれないが、相手だって右を差されまいとしてくる。水入りとなった照ノ富士戦が注目されたが、千秋楽の豊ノ島戦こそ逸ノ城にとってはいい勉強になったのではなかろうか。

 小結・安は悪くなかった…というよりは良かった。6勝しかできなかったのが不思議なほ。三役でも勝ち越せるくらいの力はついてきている。1場所で三役に戻ってきてほしい。栃煌山は安を上回る7勝。差し身の上手さに定評あり、立合いから押し込む力もすごいのだが、昔から左膝の送りに難がある力士。今場所は弱点が目立ってしまった。

 平幕力士でも奮闘した力士は多い。10名くらい記したいが、今回は照ノ富士、遠藤、安美錦の3名に絞る。照ノ富士は力強い。8勝7敗と勝ち越し。逸ノ城と同様に小結を飛び越えて新関脇もほぼ確実な情勢。3月場所ではもっと勝つのではないか。見るからに腰が重そうである。中に入っても極めがある。遠藤は当たりが強くなり、当たってから押し込まれる機会が少なくなった。3月は上位と対戦する機会は減りそうで、三役昇進へチャンスである。安美錦は逸ノ城と遠藤という注目の若手力士を破った。上位には勝てないまでもさすが安美錦と思わせる相撲を見せてくれた。何かやってくれると思わせる力士である。例えば、安美錦は対白鵬戦4勝35敗(2015年1月場所終了時点)と勝率は高くないが、「安美錦ならひょっとして」と思わせてくれる。


 勝負判定はどうだっただろうか。幕内では明確な誤審と呼べる取組は見当たらず、念のため物言いをつけたくなるような取組もよく我慢して物言いをつけずスムースに進行させた。こう書いてしまうとサラッとしているが、大切なことであり勝負審判の方々には拍手を送りたい。巷で話題になった13日目の白鵬-稀勢の里戦も、取り直しは妥当な判断だった。


 全勝の白鵬と次点の日馬富士、稀勢の里、徳勝龍は11勝。星4つの差がついてしまったね。優勝決定も13日目だったし、白鵬以外の力士、特に日馬富士、鶴竜の2横綱の奮起が求められる。

 3月場所は白鵬が6連覇を狙う。それを阻止する力士は現れるか、楽しみである。



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