2014年9月場所総評

白鵬が千代の富士に並ぶ31回目の幕内優勝を達成し、逸ノ城が13勝をあげ、千秋楽まで優勝争いを演じた。新入幕優勝なら100年ぶりだった。さらに旭天鵬が73年ぶりに40代で勝ち越し。「記録の場所」は客足好調で3日目以外の14日間で満員御礼となった。

先に全般的なことを。多くの記録で話題になったのだから土俵もそれに相応しい内容だったと言いたいところだが、そうとも言い切れない。序盤は観客の熱気に後押しされたか充実の土俵。ところが中盤はまだしも、終盤戦に入ると大失速。中身は薄かった。

立合いの呼吸の悪さは大相撲史に残るほど。見本となるはずの地位にある力士の中に見本になっていない、もっとはっきり言うと悪い見本になっている者はいないだろうか。

立合いは合わせるもので、駆け引きに使うべきでない。


優勝した白鵬の内容は良かった。7月場所とは明らかに違う。鋭く踏み込み左前廻しを掴んで出る相撲は見応えがあった。13日目の黒星は悔やまれる。11日目の豪風戦は反則を取ろうと思えば取れる範囲で危なかった。

鶴竜は前半危ない相撲を拾って、後半本領を発揮するパターンが多いが、今場所は後半息切れ気味で11勝。それでもストレート給金は評価されるべきである。

日馬富士は3連勝スタートだっただけに、残念な途中休場。


大関は3名とも不本意な場所に終わった。

豪栄道は新大関の場所であり評価を保留する。

琴奨菊は前半戦どうなるかと思ったが、9勝。よく盛り返したとは思う。

稀勢の里は前半戦で見事な相撲ぶりを見せてくれた。後半は大きく崩れてしまい、場所全体の失速の原因のひとつとなってしまった。これは鶴竜にもいえることである。


関脇以下では逸ノ城。7月は十両で13勝し高い評価を受けたが、栃ノ心に本割、決定戦と連敗した。栃ノ心戦の相撲ぶりや東10枚目という地位から勝ち越し、もしくは7勝できれば合格だろうと筆者は思っていた。

初日、2日目は圧勝という感じにはに見えない相撲で連勝スタート。筆者が逸ノ城を過小評価していたと思い知らされたのは3日目から三役経験者との対戦だ。栃煌山、松鳳山、千代鳳を立て続けに撃破した。

7日目こそ勢に敗れたが、11日目から稀勢の里、豪栄道、鶴竜に勝ち、12勝1敗同士で白鵬との相星決戦に臨むまで至る。

稀勢の里、鶴竜との対戦は立合いの変化で勝っただけにいまひとつ実力が測り難いが、豪栄道や千秋楽対戦した安美錦を圧倒したところを見れば、三役クラスの実力はありそうだが、1場所だけで判断は難しいので最終的な評価は保留したい。

逸ノ城の武器は右である。左上手を取る、取らないは特別重要だとは思わない。取ったから勝てるわけでもなければ、取れないから勝てないわけでもない。

ところで東前頭10枚目の力士を横綱、大関合わせて4名と当てるのはどうなのだろうか。特別なケースを除けば、番付編成上は大関からの1勝も幕内下位力士からの1勝も変わらない運用がされているはずである。勝てば勝つほど勝ちにくい上位力士と当てられるので、中盤までに2敗か3敗して目立たないようにしておくのが得策になってしまわないだろうか。上位と当たることは貴重な経験であり、前述の目立たない作戦を考える力士などいないと信じたい。


豊ノ島は怪我で途中3日の休みがあっても6勝。初白星をあげた中日ということを考えると後半持ち直した。千秋楽、筆者は豊ノ島を逸ノ城に当てるのも面白いと思っていた。左の堅い豊ノ島に対して逸ノ城がどう対処するか興味深い。

豊ノ島もそうだけど、個々に見ると豪風、嘉風、安美錦と奮闘した力士は少なくない。そう考えると立合いの乱れは実に勿体なかった。立合いさえ改善されれば相当良い場所になると思う。

「立合い講習会」的なものをを開くというのもひとつの手であろう。最終的には力士の意識にかかてっくる部分であり、1年の締めくくりである11月場所では観客の熱気にも負けない、充実の土俵が見たい。


総評一覧に戻る
トップページへ戻る