2014年5月場所総評

久々の3横綱体制で迎えた5月場所。優勝は角界の屋台骨である白鵬で2場所ぶり29回目。成績は14勝1敗。

14勝という成績は見事だが、いつもの安定感が見られなかったことも事実。右四つになれれば、安心して見られるのだが、5日目の宝富士戦は左四つを許し俵に詰まる場面も。反応の良さで白星を拾っていったが、これはあまり強い勝ち方とはいえない。これがいつまで持つかもわからない。特に白鵬はとっさの時に左側へと反応する癖があるから、そこを突かれるとさらなる窮地に陥ることだろう。解決策は右四つに組み止めること。白鵬の王道相撲である。ところが、この右四つに相手も簡単にさせてくれない。踏み込みに鋭さが足りないのか。相手の研究もあるにしても、「白鵬 右四つ」はかなり前から認識されているから今更研究どうこうだけではないと思われる。

また、12日目の稀勢の里戦にも触れないといけない。まず稀勢の里が2回突っ掛けた。3回目、稀勢の里がつんのめるような形になり、重心を後ろに戻したところ、白鵬が左から張って立った。立合いは駆け引きに使うものではなく合わせるものだと思う。両者ほどの最手ならば、合わせられるはずだ。賜杯の帰趨を大きく左右した一番だけに白鵬や稀勢の里は勝ちたい、一方の観客は熱戦を期待する。これは観客のワガママなのだろうか。

稀勢の里は優勝次点。13勝2敗で白鵬、碧山に敗れている。まず、怪我で力を出しきれなかった前2場所と明らかに異なり、状態が戻ったことは収穫である。こう書くと時間が経過すれば状態が戻るのは当たり前ではないかと思われるかもしれないが、元の状態に戻すのはなかなか難しい。ましてや怪我で休んでいる力士に「パワーアップして戻ってきてくれ」などとは無理な注文である。若干話が逸れたが、碧山戦もすんなりした立合いとは言い難いものであった。左が差せれば別にしても、守勢に回ると立て直しが遅いことが気になる。

日馬富士は11番。稀勢の里戦で反則を犯し、2日目にもニュースになってしまったが、日馬富士の復調気配こそ今場所最大の収穫なのである。初日敗れたところでは、3横綱で最後までいけるの・・・などという考えも脳裏をよぎったが、低く鋭い立合いは惚れ惚れする。2日目の影響があったのか、豊ノ島戦で詰めを怠り敗れたのは勿体なかった。勝っていれば、優勝争いは一段上のものになっていたはずだ。

新横綱・鶴竜は9勝6敗。真価が問われるのは7月場所である。新横綱で9番は合格とはいえないかもしれないが、この場所だけは参考程度にしてあげたい。

琴奨菊は5勝しかできず負け越し。肩のテーピングが外れ、いよいよ「らしい相撲」が見られるかと心躍らせたが、結果は出なかった。ともかく少しでも状態を戻して7月場所にかけるしかない。ガブろうにもガブれない姿を見るのはこちらも辛いものがあった。

関脇以下では両小結が持ち味を発揮してくれた。勝ち星を伸ばすことはできなかったが、奮闘ぶりは素晴らしい。東の嘉風は稀勢の里戦、死闘といっても差し支えない。「魂の相撲」というものを久々に見た。稀勢の里戦が非常に鮮明に記憶に残るが、初日も日馬富士を圧倒するなど場所を盛り上げた。

西の千代鳳、21歳の魅力はそう簡単に引き技を喰わないことにある。相当稽古を積んでいるというし、その賜物なのだろうが、見ていて落ちないのは面白い。叩き込みばかりが決まる本場所はどうも味気ない。稽古熱心ということで周囲への好影響も期待できる。5勝10敗ということで平幕から出直しになるが、ファンも含め、相撲に携わる人は千代鳳という才能を持っていることをもっと喜ぶべきであろう。

平幕では佐田の海が2桁勝って敢闘賞。新入幕敢闘賞は父である佐田の海も獲得しており、親子幕内力士8組目にして初だそうな。3月は西十両4枚目で8勝、番付運にも恵まれての昇進だったが、素晴らしい相撲ぶりでその昇進が間違いではなかったことを証明した。

人気力士・遠藤は7勝8敗と惜しくも負け越し。カチ上げてくる大砂嵐に左顔面を出したことはどういう意図があったのか、分かりかねるが、膝を怪我しなくて本当に良かった。豊ノ島に先場所に続き勝ったことが、この力士の実力を表している。鶴竜に勝ったことよりもあの豊ノ島に2場所続けて勝てる力士なのである。一方で松鳳山には3月に勝っているが、今場所は敗れた。こう書くのは簡単だが、プロとアマの差が激しい大相撲の世界で入門2年足らずに松鳳山や豊ノ島相手にこうも相撲が取れるのはとんでもないことである。ましてや本格的な相撲歴3年未満で千代の富士に完勝した小錦などは400年の大相撲の歴史の中でも・・・。

ただ、一意見を述べたい。協会が遠藤の人気を利用するのはわかる。むしろ、全く使わない方がおかしい。ただ、あまりにも背負わせすぎではないか。筆者含めたファンにもいえることであるが、これで潰れたらそれまでの力士と考えているのだろうか。遠藤に限ってそんなことはないと信じたいが。


全般的なものを見れば、中盤戦は大いに盛り上がり、最後の4日間は盛り上がりに欠けたというところだが、どうしようもないくらい悪い場所ではなかったと思う。

7月の見所を列挙しよう。白鵬の30回目の幕内優勝なるか、日馬富士がさらに調子を上げてくれば、さらに面白い。鶴竜も7月は巻き返してくるはずだ。稀勢の里は7月も12番、できれば13番勝てば、綱取りの声が大きくなってくるだろう。カド番の琴奨菊には悔しさをぶつけてほしい。では7月場所でまた会いましょう。



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